腰痛と姿勢、体操、予防法

 仙腸関節の「ゆるみの位置」では、ギックリ腰を起こす可能性がありますが、これは過剰な負荷がかかるときに限られます。それゆえ、座位のように仙腸関節に負荷がかかる時には「しまりの位置」が良い姿勢になります。しかし同じ姿勢を2時間以上続けると、どんな姿勢でも不快感を起こします。これは過剰負荷による仙腸関節の炎症と考えられます。

ですから2時間たったら姿勢を変える必要があります。負荷が少ない「ゆるみの位置」の方が楽になりますが、それも2時間以上になると、やはり負荷のかかっている仙腸関節に不快感が出ますのでヒトは臥位でも自然に寝返りをすることにより姿勢を変えて調整しています。姿勢を変える時には、最も楽に感じる姿勢が最良です。すなわち、痛みに関していえば、良い姿勢は常に変わります。これは博田先生の結論です。ちなみに「ゆるみの位置」とは座位でも立位でもない、その間の中腰をいいます。一方「しまりの位置」はスキージャンプの着地姿勢や相撲の蹲踞などがこれに相当します。腰、股関節、膝、足首がそうです。立位での「閉まりの位置」は軍人の敬礼姿勢がそれにあたります。

 

*正しい腰痛体操はありません。

 現在、日本で行われている腰痛体操は、アメリカのWilliamsが考案したWilliams exerciseを誰かが間違って訳したもののようです。Williams exerciseはほとんど腰椎前彎(腰のカーブの前方への反り)増強を改善する目的で、一般には腰の屈曲を中心とした体操です。これに対してニュージーランドの理学療法士のマッケンジーが考案したのは腰椎伸展(後に反らす運動)を主としたものでマッケンジー体操といわれていますが、これは運動の目的が何だかよく分かりません。この体操は、臨床的診断が目的で開発された技術ではなく、治療目的が痛みなのかもしれません。AKA-博田の主ターゲット器官は、はっきりと仙腸関節に特定されており、痛みやシビレなどの原因の診断、治療という明確な目的があり、それに結果が伴っています。

 以上のことからお分かると思いますが、現時点では腰痛に対する適切な体操は存在しません。AKA-博田法では腰痛では、痛みの原因は仙腸関節の機能障害で、病態は次の3つの段階に分類されます。軽症~重症の順に①先ず仙腸関節機能異常で、これは12回の治療で3週間以内に改善します。②単純性仙腸関節炎で、AKA-博田法を行うと2ヶ月以内に改善がみられほとんど3ヶ月以内に治癒するグループです。③仙腸関節炎特殊型で3ヶ月以上経過しても繰り返し1年以上かかるグループで、これらがAKA-博田法の治療対象になります。

 ③の関節炎特殊型では、関節の加齢変化による関節拘縮(関節を包んでいる関節包や関節包と連結している靭帯の柔軟性が低下して硬く縮んだ状態)が最も多く治療経過は長引く傾向にあり、難治性に分類されます。なお外傷や細菌感染による関節炎はAKA-博田法の治療対象外です。神経が圧迫されて起こる神経痛も対象外となります。AKA-博田法では神経痛と診断しません。仙腸関節から発生する関連痛(放散痛)と考えます。

整形外科的病名における痛みは実は仙腸関節を原因とした関連痛です。腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症、腰椎椎間板ヘルニアのほとんどが誤診です。X線やMRIなどの画像所見と患者さんの症状が一致しません。ですから神経ブロックを行っても神経痛はよくなりませんし、手術により狭窄を広げたり、すべりを金属で固定しても症状が取れない患者さんが多いことからも明らかです。画像だけを見て「はい手術です」と言われたら即答しないことをお勧めします。後で苦しむのは患者さんです。

 

仙腸関節の動きの幅が狭くなると、痛みを起こしやすくなります。この時の痛みの原因は

非細菌性の関節炎です。関節への負荷が過剰になったとき、運動をし過ぎたとき、頻回に重いものを持ったときなどで起こりますが、疲労も大きな誘因になります。したがって予防には過剰な運動を避けることが大切で、AKA-博田法の治療後には、スポーツなど激しい動きは行わないようにして下さい。walkingも痛みが出たらやめて下さい。1時間おきくらいに仙腸関節を軽く動かすように、腰の屈伸運動を3回くらい数秒づつ、屈伸の角度では最大可動域の半分くらの角度がいいと思いますがゆっくり行って下さい。速く大きく屈曲しますと折角良い位置に収まっていた関節の位置がズレて引っ掛かる危険があります。スポーツクラブで推奨されている水中歩行も、速く行いますと水の抵抗で骨盤が左右に振られ仙腸関節がねじれて引っ掛かって腰痛が再発しやすいのでゆっくり歩く方が安全です。

 

 なお重労働に従事する人は、そのための筋力が必要になります。重いものを持つときは腰を伸展し(反らして)、仙腸関節の「閉まりの位置」に近い姿勢をとれば安定します。そうすると他の姿勢をとる時よりも筋力を必要としなくなります。また仙腸関節には大きな動作筋が付いていないので筋力トレーニングで腰痛を予防することが出来ません。無論ストレッチングも腰痛への直接的な予防効果はありません。腹筋背筋を鍛えた筋骨隆々たるアスリートでも簡単にギックリ腰になったり長く腰痛で苦しんでいる方は少なくないです。

 

 よく良い姿勢、悪い姿勢は?と聞かれますが、どの姿勢でも同じ姿勢が2時間を超えると、仙腸関節に過剰な負荷がかかり、痛みが出る可能性があります。もし症状が出始めたらとりあえず楽な姿勢に変えることです。仙腸関節にねじれが起こる姿勢では、より短時間で痛みが出ます。中腰の姿勢は最もギックリ腰が起こりやすい姿勢で、仙腸関節の「ゆるみの位置」がその原因になります。

 

 それゆえ、仙腸関節の「閉まりの位置」、すなわち腰部は伸展位(後に反らした姿勢)の方が筋の収縮は最小で、最も痛みを起こしにくくなります。これは座位でも同じです。 

 胡坐よりも正座の方が仙腸関節は閉まりの位置に近く、腰に関しては長持ちします。

臥位でも、同じ姿勢が2時間以上続くと痛みが出る可能性があり、